八岐の園/ボルヘス

(…)すなわち分岐し、収斂し、並行する時間のめまぐるしく拡散する網目を信じていたのです。たがいに接近し、分岐し、交錯する、あるいは永久にすれ違いで終わる時間のこの網は、あらゆる可能性をはらんでいます。われわれはその大部分に存在することがない。ある時間にあなたは存在し、わたしは存在しない。べつの時間ではわたしが存在し、あなたは存在しない。また、べつの時間には二人ともに存在する。好意的な偶然が与えてくれたこの時間に、あなたはわが家を尋ねてこられた。べつの時間では、あなたは庭園を横切ろうとして、わたしの死体を見つけられた。さらにべつの時間では、こんなことをしゃべっているわたしは、ひとつの誤謬であり、一個の幻なのです。